【中級】第4章:エリオット波動理論の基礎と応用
4.1 エリオット波動理論の基本概念
エリオット波動理論は、ラルフ・ネルソン・エリオットによって開発された相場分析手法で、市場は「波動」と呼ばれる規則的なパターンで動くという考えに基づいています。この理論では、市場の価格変動が投資家の心理により繰り返される「波動」を形成し、これを分析することで相場の動向を予測できるとされています。
エリオット波動理論では、価格の動きは基本的に5つの「推進波」と3つの「調整波」の組み合わせで構成されているとされます。
1.推進波(インパルスウェーブ)
・トレンド方向に進む5つの波で構成され、1、3、5波がトレンドに沿った動き、2、4波が調整となります。
2.調整波(コレクティブウェーブ)
・トレンドに反する3つの波で構成され、A、B、C波がトレンドの反転や一時的な休止を示します。
この理論は、相場の上下動が一定のリズムで進行し、そのリズムを分析することでトレンドの終わりや次の大きな動きを予測できるという前提に基づいています。
- プロの視点
エリオット波動理論は、価格の動きに一貫したリズムがあることを前提としていますが、全ての市場状況に適用できるわけではありません。トレンドが強い時や一時的な過熱状態の時には、波動のパターンが崩れる場合もあるため、他のテクニカル指標と組み合わせて活用することが重要です。
4.2 エリオット波動の推進波と調整波の詳細
エリオット波動理論の中心は、価格が5つの推進波と3つの調整波によって動くという構造です。それぞれの波動には独自の特徴があります。
1.推進波
1波: 最初の上昇(下降)で、通常トレンドの始まりとなりますが、ボリュームはまだ少なく、相場参加者の多くはトレンド転換に気づいていません。
2波: 1波に対する調整で、トレンドの持続力を確認させる役割があります。トレンド転換と見せかけることが多く、騙しが発生しやすい波です。
3波: 最も強力な波動で、トレンドの本格的な始動を示します。ボリュームが増加し、相場参加者の大多数がトレンドに乗り始めます。
4波: 再び調整が入り、トレンドの持続力を確認しますが、3波ほど深い調整にはならないのが特徴です。
5波: 最後の上昇(下降)で、トレンドの終わりを示唆します。過熱感が生じ、相場が行き過ぎることが多いです。
2.調整波
A波: トレンド終了後の初期反発であり、通常は弱い動きです。これがトレンドの反転を示唆する最初の兆候となります。
B波: A波に対する一時的な逆行で、トレンドが続くと勘違いさせる「ダマシ」の波動です。ここで多くの投資家がトレンドの復活を期待します。
C波: 最も強力な調整波で、トレンドが完全に反転することを確認します。この波動はA波を大きく超える場合が多く、相場の大きな転換点となります。
プロの視点
エリオット波動の理論を理解するためには、特に3波と5波、また調整波のC波に注目することが重要です。これらの波動はトレンドの勢いを示すシグナルとなり得ますが、常に波動を正確に見極めるのは難しいため、チャートパターンや他のテクニカル指標と併用することで、精度を高めることができます。
4.3 エリオット波動理論の応用
エリオット波動理論は、そのままでは非常に複雑に感じることがありますが、トレード戦略に応用するためのシンプルなアプローチがあります。
1.トレンドの識別
エリオット波動理論を活用する最も基本的な方法は、トレンドの識別です。推進波の始まり(1波や3波)を確認することで、新しいトレンドの発生を把握し、適切なタイミングでエントリーすることが可能です。
2.トレンド終了のサインを読む
5波目が形成された後は、トレンドが反転する可能性が高いとされます。これは利確ポイントの指標として非常に有効です。また、調整波のC波を狙ったエントリー戦略も使えます。
3.調整波を活用した逆張り戦略
調整波のA波やC波では、逆張りのエントリーを検討することが可能です。特にトレンドの大きな反転を予測している場合、C波を捉えることができれば、大きなリターンを得るチャンスがあります。
4.フィボナッチとの併用
エリオット波動とフィボナッチリトレースメントやフィボナッチエクスパンションを組み合わせると、価格のターゲットゾーンを見つけやすくなります。例えば、推進波の3波や5波はフィボナッチの拡張ラインと一致することが多く、リスクリワード比を高めるトレードが可能です。
プロの視点
エリオット波動理論を単独で使用するのは非常に難しいため、他のツールやインディケーターとの組み合わせが必須です。また、波動のカウントに時間を費やすよりも、相場全体の流れを理解し、実際のトレンドに従って柔軟に対応する姿勢が成功への鍵となります。
4.4 ケーススタディ: BTC/USDのエリオット波動分析
ケース: BTC/USDのエリオット波動を使ったトレードシナリオ
・状況: BTC/USDは2021年の大きな上昇相場の後、長期的な調整局面に入りました。この間、トレーダーの多くがビットコインの反発を期待していましたが、チャート上には典型的な5波構造が形成されていました。これを基にトレード戦略を立て、次の大きな動きに備えることができました。
・トレード戦略
1.5波目の確認: BTC/USDは強い上昇トレンドの後、5波目の最終段階に入りました。この5波目の終わりが近づいていると考え、利確のタイミングを狙います。特にこの5波目では、相場の過熱感が高まり、RSIなどのオシレーターも過買い状態を示していました。
2.調整波のA波開始: 5波目の終了後、BTC/USDは調整局面に入り、A波が始まる兆しを見せました。A波が進行する間、BTC価格は徐々に下がり、短期的な売りを仕掛けるチャンスが生まれます。
3.C波エントリー: A波終了後、B波の一時的な上昇が発生し、トレーダーはトレンドの再開と見誤る可能性があります。しかし、C波の開始を見極めた後、逆張りエントリーを狙いました。このC波では、相場が急激に下降することが多く、BTC/USDは予想通りの大幅な下落を見せました。
4.リスク管理: エリオット波動を基にしたトレードでは、波動のカウントが難しく、トレンドが継続する可能性も考慮に入れなければなりません。損切りポイントをC波の上限に設定し、リスクを最小限に抑えました。
・結果: C波が進行し、BTC/USDは急激に下落。予想通りの価格変動となり、C波の利確ポイントでポジションをクローズし、トレードに成功しました。フィボナッチリトレースメントを活用し、正確な利確ポイントを設定したことも成功の鍵となりました。
- プロの視点
BTC/USDのようなボラティリティが高い通貨ペアでは、エリオット波動の推進波と調整波を狙った戦略が特に有効です。特にC波の開始時に正確にエントリーできれば、大きなリターンを期待できます。ただし、相場の動きが速いため、フィボナッチやオシレーターを併用してリスクを管理しつつ、素早い判断が求められます。
4.5 まとめ
エリオット波動理論は、トレンドの始まりと終わりを予測するための強力なツールです。5波の推進波と3波の調整波という構造に基づき、市場のリズムを分析することでトレードのチャンスを見極めることができます。しかし、波動のカウントには主観的な要素が含まれるため、他のインディケーターやフィボナッチ分析と組み合わせて精度を高めることが重要です。